被災者の救助が現場での最優先事項
「被災者救出が最優先」≠「我が身を投げ出して救出する」であることを忘れてはいけません。
感情に任せ衝動的に行動することを避けなければ、2次災害を発生させる要因となります。
例えば、有機溶剤が原因で倒れた人を発見し、救助するために同じブースに保護具を付けずに飛び込む。
結果、救助者は有機溶剤を吸うことで被災者となってしまいます。
救助しなければと焦る気持ちが、自身を災害に巻き込む要因となります。
人命救助が第一であることには変わりはありませんが、救助のために、まずは、関係のある設備機械などの緊急停止させます。
緊急時の経路を確保する
緊急時には冷静に行動すると言っても簡単にできるはずがありません。
そのため常日頃から緊急時に備えることで災害時の対応が可能となります。
現場で災害が発生した場合に周囲の人はどのような行動に移すでしょうか。
・被害を避けるために現場から立ち去る!
・被災者救助か被害拡大を食い止めるために現場へ急行する!
どちらにしても現場との最短ルートが形成されていなければ被害は拡大します。
そのルート(道路)に進路を妨害する荷物があったらどう思いますか?
救急車が緊急患者を乗せてサイレンを鳴らす・・・
そんなときに路上駐車が救急車の行く手を遮る・・・
同じように工場内には作業場、備品置き場、通路と明確に区別されています。
その区別を常に行うことで緊急時の確保に努めることができます。
現場設備を緊急停止する
暴走している機械を止める!
これが災害を重篤にしない条件です。
しかし、機械の使い方は熟知しているが、停止する方法は職長(現場リーダー)しか知らない現場は多く見受けられます。
「機械なんていざとなったら電源抜いてしまえばいいんだよ!」などと安易に考えていませんか?
その電源は何処?
人が巻き込まれている緊急事態に知らないことできますか?
災害は「挟まれ・巻き込まれ」が全災害の約29%を占めます。
*参考資料:中央災害防止協会~労働災害分析データ~製造業
その29%の災害を軽傷にするためには、緊急停止ボタン,バルブ・コックの位置を再確認してください。
配管や電源系統図を周知したり、バルブ・コックの操作方法を確認することも必要です。
非常事態を周知させる
発生した非常事態を周囲5mの作業者しか知らず、現場周辺の作業者だけが避難するのでは、2次災害の原因を生みます。
避難経路が渋滞を発生させ、災害者を増加させます。
現在では災害時にはスマートフォンが活躍します。
現場では非常警報など現場全体で発信できるようにしなければ避難できません。
社内及び社外への連絡先リストを作成する。
緊急時に連絡先がわからない事態となると、更に現場はパニック状態となります。
緊急時の連絡先をリスト化し掲示することで誰もが緊急対応が可能となります。
被災状況により受け入れる病院の列挙,使用している設備の緊急連絡先,被災労働者関係の緊急連絡先,上層組織の連絡先
ぐらいは即座に把握できるようにする必要はあります。
緊急備品は常にチェックする
救急箱・救急用具の置き場を再確認する
災害が発生して救急箱を探すなどを行っていては、被災者の傷病は増々悪化します。
そのため救急箱や救急用具の置き場はもちろん、中身は常に把握する。
(箱は外見で有無が判断でできるように透明であることをお勧めします。)
消費期限の過ぎた消毒液で消毒して傷口が悪化するなんてことは避けたい事態です。
ちょっとした応急処置が被災者の容態を軽くすることは当然なのです。
消火器や消火栓の位置をチェックする
消化設備(消火器や消火栓)が何処にあるか知っていますか。
「知ってますよ!この辺りにあります!」
って言っても実際には・・・「ない!!!」
などは頻繁に起こることです。
消火器・消火栓配置図を見直すことを忘れてはいけません。
現場に配置する消火器は、必要個数や大きさが規定以上でなければなりません。
そのため消火器や消火栓の配置図を作成し、現場に掲げることが必要です。
現場に掲げることにより、非常時に的確な行動ができることだけではなく、レイアウト変更を行った際に消火器の配置が適切か否かを確認することにも役立ちます。
消火器の周りに製品や備品を置いていては、非常時に即座に取り出せないばかりか、何処にあるのか分からず被害が拡大します。
消火器は、有事の際に初期消火を行う人が
・使いやすい場所にあること
・すぐに持ち出しやすい場所にあること
・消火器がある所がすぐに分かること
が非常に大切なのです。
災害を分析して同じ災害を防ぐ
子供の頃、テストで同じ間違いをしたときに「ちゃんと復しないから同じところばかり間違うのよ!」などと怒られた経験はありませんか?
災害が絶対に発生しない現場はありませんが、災害発生率を低減させることは可能です。
軽減のためには、同じ事由による災害を発生させないことは必須なのです。
作業の事実を確認する
事実確認を調査するときは幅広く考え、人,モノ,管理体制,作業方法など様々な要素を客観的に捉えます。
単に作業内容だけを見るのではなく、作業者の健康状態、資格の有無、資格証の確認、経験値などの事実確認も行わなければなりません。
事実確認のため感情移入せず、さらに、見ているものだけにとらわれない把握が必要なのです。
災害発生の問題点を摘出する
全ての要素が書き出されて初めて問題点を考えます。
問題点に大小はありません。
小さな問題が積み重なり大きな災害を発生させることも十分に考えられます。
問題点の中には、災害の直接原因もあれば関節要因もあります。
目に見えるだけの現状を捉えるのではなく、その背景も引き出すことが必要なこともあります。
災害発生の原因を確定させる
摘出した問題点を精査して災害が生じた原因を追究します。
関節的な原因が連なって、結果として災害が発生することも十分にあり、原因が現場にないこともあります。
運転手の疲労や体調不良!
受けた荷が予定と異なる!
管理監督者の指示ミス!
なども重要な災害発生原因です。
災害回避の対策を施す
災害の原因が判明した後、職長は現場でどのような指示をすれば良いでしょうか。
「皆さん、今回の災害は確認を怠ったことが原因です!今後は気を引き締めていきましょう!」
このような掛け声だけでは絶対に災害は減りません。
ゼロ災害を行うために、リスクアセスメントを図るなどにより災害の発生要因を潰すことで対策を施します。
発生した災害は無かったことにすることはできません。
同じ災害が二度と発生しないように徹することが必要なのです。
作業現場の相談役
現場実践型-業務改善コンサルタント
エスエムシーコンサルティング SMCCONSULTING 職長教育事業