指導・教育の内容が作業者に正しく伝わらない
「何度、言ったら分かるんだっ!」
この言葉を言ったことのある職長(安全衛生責任者)は多いのではないでしょうか。
- リーダーが、何度、指導しても作業者が同じ失敗をする。
- 作業者がリーダーの指示を正しく理解しない。
指導・教育での職長(安全衛生責任者)の最大の悩みは、指導・教育したことが、作業者に正確に伝わらないことです。
正確に伝わっているが、実行できないのであれば、練習を重ねれば解決する。
しかし、間違って認識していれば何度練習しても結果は同じ・・・
伝えたい内容を的確に作業者へ指導・教育することが最重要なのです。
作業者のミスに対し、その場で指導することは効果的です。
しかし、現場での指導は個別対応や作業修正が多いため正しく伝わったかは不明確です。
さらに、今後、時間が経過すると、作業者だけでなく、指導した職長の記憶も薄れる。
もはや、その時の指導・教育の正確な内容などは誰も記憶になし・・・。
これでは、職長が行った指導・教育が作業者に正しく内容が伝わったのか判断できません。
何を指導・教育したか分かるようにしたい
指導・教育する職長の願望としては、
- 指導や教育を正確に作業者へ伝えたい。
- 指導や教育の実施が月日により風化されず、覚えていてほしい。
職長が指導・教育した内容を、作業者が時間により風化することを防ぎたい。
仕事(作業)の貴重な時間(労働時間)を割いて指導・教育を行ったのだからムダにしたくない。
指導・教育の正しい内容を、職長と作業者で共有したい。
同じことを何度も言わなくて良いように、職長と作業者だけでなく、現場全体の事案として共有することが理想だ。
指示や指導は1回で済ませたい。
それが、経営者や職長(安全衛生責任者)の本音ではないでしょうか。
指導・教育の手法を文書化する
職長の指導方法や教育手法は、作業者の理解度により手法が異なることは当然のことです。
完全に同じ状況での指導や教育はありません。
しかし、職長が作業者全員に習得してほしい事項はブレないはず。
指導・教育の根底は変わらない。
そのためにも、指導・教育事項の内容が明確であり、何時でも誰でも同じ内容を確認できることは必要ではないでしょうか。
では、そのために必要なことは何でしょうか?
それは・・・
指導・教育を行う都度、文書化することに他なりません。
ありきたりであり、一番面倒なことではあるけれど文書化することは重要なのです。
文書化と聞いて大半の職長やリーダーは、
- 間違ったことを指摘するたびに、文書化していては・・・
- 文書化までしなくても何度も言えば良いのでは・・・
もちろん、文書化せずに、職長の意思が100%伝わり、時間の風化がなければ必要ありません。
指導後に文書化するなどは時間のムダです。
では、職長が行う指示の元は何処から来ていますか?
社長からの業務指示、得意先からの発注書などなど。
その社長や得意先から文書(メール)の指示は、間違いが生じることを防ぐために、何度も見返していませんか?
文書として記録することで、
- 感情に左右されず、事実のみを伝えることができる。
- 職長の発信内容、作業者の誤理解が確認できる。
- いつまでも風化せず、指導・教育を共有できる。
小学校の宿題をもう一度
指導・教育の文書化は、子供の頃を思い返すと分かり易いかもしれません。
学校の授業で習ったことについて、自宅で宿題(復習)したことはないですか?
宿題は、先生から授業で教わったことを、要約したプリントで解くといった感じだったのではないでしょうか。
プリントの内容は、授業の状況に関わらず不変であり、学校教育の内容に沿った出題です。
このように学校の授業においては、檀上で教師が生徒の理解度に応じて教え方を変化させる。
一方、宿題は生徒全員が同じであり、教え方により変わるものではありません。
現場で教わったことを、文書で再確認する行為は子供の頃から身についているのです。
文書の作成方法
文書化すると言ってもどうすれば良いのでしょうか。
答えは、指導・教育を行った内容を正確に記載することです。
丁寧に記載する必要はありません。
職長が発した言葉をありのままに書くことです。
文書作成に時間を要したのでは本末転倒です。
要点以外は☑項目で足ることですから時間短縮に心掛けましょう。
6W1Hに基づいて書けば足ります。
- What(なに?)
☑指導 OR □教育 - Why(なぜ?)
□作業者のミス OR ☑新規導入 OR □顧客要望 - When(いつ?)
〇〇年〇〇月〇〇日〇〇時〇〇分~〇〇時〇〇分まで - Where(どこ?)
具体的な場所 - How(どんなふうに?)
ここ一番大事(箇条書きが理想) - Who(だれ?)
職長(安全衛生責任者)やリーダー名 - Whom(だれに?)
作業者で該当する人全員
文書化することに時間を要していては本末転倒です。
文章の雛形に完成形はありません。
雛形ができなくても実際に指導・教育を記載するだけでも構いません。
文書化した効果は
文書化した指導・教育の内容を作業者へ渡すタイミングを考えなければなりません。
例えば、作業者の失敗により、職長が指導した場合の改善指示書のタイミングはどうでしょうか。
失敗により指導となれば、職長からの叱咤も少しあるはず。
その叱咤からの指導を文書化するとなれば、タイミングは重要ではないでしょうか。
失敗が原因であれば、作業手順書を見ながら、その手順に沿っているか否かを確認する。
その手順書に注意事項を書き加え再度渡す。
その手順書を渡すタイミングに指導文書を一緒に渡すと効果的です。
作業者が受け取り易く、記憶に残るタイミングを図る必要があります。
タイミングを間違えると失敗に対する過剰な念押し⇒パワハラと勘違いされます。
指導・教育後に作業者へ渡す習慣
文章化した指導内容などは、職長が自己満足のために独りで保存していては意味がありません。
指導を受けた作業者へ必ず渡す習慣をつけましょう。
その際に、指導内容によって渡す時期や方法も異なります。
緊急を要する内容であれば、まずは、応急的な指導により、その場を回避します。
その後、正式な社内共通書式で全員への共有が必要です。
しかし、日常作業の一環で即座に指示する必要がない内容であり場合などは、職長を含めた複数人で精査ののちに文書化する方が良いこともあります。
職長と作業者で共有できる
文書化することは、発言を記録すること。
そのため文書化している職長(リーダー)は指導・教育を正しく伝えるために精査することができます。
また、指導・教育を受ける作業者は、内容を再度確認することで認識の間違いを防ぐことができます。
文書化することは非常に面倒なことです。
職長からすれば、同じ作業なのに作業者によって指導・教育方法が異なるから都度作成しなければなりません。
その方法が異なることが大切なのです。
十人十色の文書を残してみることです。
一年後には、現場のスーパー職長となっていることでしょうか。
指導・教育の手法を明確とする
指導・教育を正しく実施していくには、職長の指導事項が作業者に正しく伝わること。
そのためにも、伝えた内容を文書に残し、作業者に渡すことが必要です。
「作業指示書」「改善報告書」「・・・・・」など
作業者に渡すことで、作業者も常に見つめ直すことが可能となります。
さらに、職長の行った発言や行動が、指導・教育のために実施した裏付けとなり、作業者が誤った認識を受けることを防ぎます。
指導・教育は作業指示書、指導個人票、改善提案書などを提示する必要があります。
もちろん、この文書の本来の目的は備忘録など作業の統一性を図るものでもあります。
作業現場の相談役
出張型 職長・安全衛生責任者教育-RSTトレーナー
エスエムシーコンサルティング SMCCONSULTING