リスクアセスメント 職長教育

墜落・転落災害を防止する

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墜落・転落は常に上位災害にある

仕事中の死傷災害において約17%が【墜落・転落】が要因なのです。
特に建設業では、34%と全体の1/3を占めます。
さらに、陸上貨物運送事業では、29%程度が墜落・転落が要因となっています。

えっ!運送事業の災害No1って交通事故ではないの?
と思った方もいるのではないでしょうか。

陸上貨物運送事業における死傷災害では、
1.墜落・転落(29%)2.転倒(15%)3.動作の反動・無理な動作(15%)となっています。
交通事故(道路)は6%程度となっています。

一方、陸上貨物運送事業の死病災害では、交通事故(道路)は全体の41%を占め、墜落・転落は14%程度なのです。

墜落・転落災害はどの業種においても大きな比率を占め、常に安全対策として取り組まなければならない事項なのです。

参照:厚生労働省平成29年労働災害発生状況の分析等

 

墜落・転落災害を防止する

ヒヤリ・ハットという言葉があります。

ヒヤリ・ハットとは、
【重大な災害や事故には至らなかったが、一歩間違えば災害や事故と直結してもおかしくはない事由のこと】

ヒヤリ・ハットの結果は、どんな感じでしょうか。
「あ~良かった!運が良かった!」と災害や事故とならなかったことに安堵してしまいます。

しかし、運悪ければ災害につながる・・・こんな事由を見逃すわけにはいきません。

ハインリッヒの法則をご存じでしょうか。

統計のもと、大きな災害には、ヒヤリ・ハットが沢山存在する法則です。

ハインリッヒの法則とは、
ある工場で発生した労働災害5000件余を統計学的に調べ、計算し、以下のような法則が導き出された。「災害」について現れた数値は「1:29:300」であり、その内訳として、「重傷」以上の災害が1件あったら、その背後には、29件の「軽傷」を伴う災害が起こり、300件もの「ヒヤリ・ハット」した(危うく大惨事になる)傷害のない災害が起きていたことになる。

この法則から、発生した災害に対し対策をとるだけでなく、ヒヤリ・ハットの事由に対し、対策をとることも非常に重要であることが分かります。

 

参照:ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ 「ハインリッヒの法則」

ヒトはミスをする

ヒトには感情があります。

忘れることもあれば、勘違いや思い過ごしなどがヒトの行動特性なのです。

①クレーンの移動で、合図がないのに、思い込みで作業を開始してしまったこと
②電源を切ったと思い込んでしまい、安全柵を乗り越えてしまったこと
③スパナの持ち手の部分をハンマー代わりに使ってしまったこと

など、のヒトの行動特性によりミスをする。

ヒトはミスを生き物であることを前提に安全対策を検討する必要があります。

ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインとは、

文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)のことを言います。

できる限り沢山のヒトが利用できるように考えられたデザインであり、ヒトの行動特性に基づいて設計されています。

ヒトはミスする生き物であるという前提がなかったら、このユニバーサルデザインの発想はありません。

墜落・転落を防ぐために考えられたデザインの例としては、

エレベーターのドアの開閉

他の階で乗場の戸が開いた階層が1つでもあると、かご室(エレベーター)は動きません。

例えば、下の階で、かご室が到着していないにもかかわらず乗場の戸が開いていた場合、ヒトがうっかりエレベーター内に入って転落することを防ぎます。

駅のホームに設置された安全バー

駅のホームにおいて線路への墜落・転落を防ぐために安全バーが取り付けられています。

この安全バーの開閉スピードやタイミングにも注目すると色々な対策が図られていることが分かります。

このように、ヒトはミスをする生き物であることを前提に、様々なデザイン(設計)が施されています。

リスクアセスメントのリスク低減措置

墜落・転落災害を防止する施策として、安全帯などの個人用保護具で安心していては危険です。

なぜか!
それは、ヒトはミスをする生き物だからです。

ヒトが安全帯を必ず付けるとは限りません。

ヒトの行動特性に基づき発生するヒューマンエラーが起こらない措置を検討する必要があります。

それが、リスクアセスメントによるリスク低減措置の検討で出てくる優先度なのです。

安全対策を検討するには、何が危険源なのかを正確に導きだします。

個人用保護具だけでは不十分

墜落・転落を防止するために一番思い浮かぶのは「安全帯」ではないでしょうか。

しかし、必ずしも作業者が安全帯を付けるとは限りません。

全体朝礼で安全帯が腰に備えられているか否かは指差呼称するでしょう。

しかし、高所で安全帯を適切に使用しているとは限りません。

個人用保護具は、作業者が適切に使用して始めて意味があるのです。

作業者が必ず使用するという前提で安全対策することは作業者の行動特性を無視した対策です。

ヒトはミスする生き物。

ミスする(個人用保護具を使用しない)ことを前提に考えると、個人用保護具だけでない対策が必要です。

それが、作業者へ責任転換しない安全対策なのです。

工学的対策が必要

個人用保護具は、作業者が装備しなければ事故を防ぐことはできません。

そのため、作業者が装備しないことを考え、作業者が、墜落・転落できない状況を作る必要があります。

作業者が墜落・転落できない対策を工学的対策と言います。

例えば、安全柵などにより作業者が落ちない方法を整備するなど。

最終的には、作業者は自分の身は自分で守る必要があります。

しかし、作業者に委ねる方法(個人用保護具)だけではなく、作業者が墜落・転落防止できない対策も必要なのです。

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