職長教育

安全配慮義務違反が問われないためにはどうする?

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労働者への安全配慮義務って何?


安全(健康)配慮義務
という言葉を時折聞くことがあるのではないでしょうか。

会社は労働者の安全や健康を配慮して作業させなければならないと定められています。

経営者や指揮命令権のある人が、労働者に作業を指示するときは、その指示が災害の恐れがないことが必須なのです。
作業者が怪我をする恐れを極限まで防ぐ配慮をすることだけでなく、業務が原因で健康を害する恐れのある作業環境を防ぐことも必要です。

特に建設業や製造業など重機や自動機械など、労働者の傍に重大な危険を及ぼす設備がある現場は、常に念頭に入れておかなければならないことではないでしょうか。

また、安全配慮義務違反労働基準法労働安全衛生法で定められている事項ではないのです。
これは労働契約法第5条の違反なのです。

労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

少し意外と思うかもしれませんが、労働契約法民法なのです。
そのため罰則はなく損害賠償が命ぜられる事案です。

民法第709条(不法行為責任)
民法第715条(使用者責任)
民法415条(債務不履行)

などを根拠に損害賠償が命ぜられることがあるのです。

民事ということは裁判なので・・・労働者が会社を相手を取って訴訟することもあるかもしれません。
裁判とする覚悟があるため時間やお金を費やしてでも責任追及したいと思うのが普通ではないでしょうか。

費用を負担せず安全な作業に取り組みたい


「我社は何10年も怪我してないから安全だよ!」

「うちの現場はみんなベテラン揃いだから大丈夫!」

と言い張っている経営者の方をお見かけします。
作業する人が怪我をしなければ特別なことをせずに現状維持で作業を進めたい。
どの会社でも労働者の怪我を望んでいる人はいません。

しかし、安全対策に取り組む時間があったら少しでも売り上げや利益を上げたい。

本音はこんな感じではないでしょうか。
当たり前なことですが、作業に集中していると安全を優先することを疎かにしがちでです。

そのためにも、現場にて労働者が手順を間違っても怪我をしない環境にすることです。

だから安全配慮に取り組む必要がある

現場は常に危険と隣り合わせです。

会社が取り組まなければならない事項は、

危険な現場の排除(危険な現場へ寄せない策)
労働者の健康管理をする。
過重労働長時間労働にならないように労働時間を管理する。

業務災害が生じる可能性のある事項で確率の大きく、災害が大きい事項から取組をすべきです。

実際の事故の62.2%が人為的ミスが起因している

平成28年度業種別事故型別労働災害発生状況では、「1墜落・転落」「2転倒」「3衝突」「4飛来・落下」「7はさまれ・巻き込まれ」「8切れ・こすれ」「11高温・低温の物との接触」「19動作の反動・無理な動作」での事故の累計数「53,417件」となり労働災害全体の62.2%を占める。
上記の8項目は、不用意が事故発生要因の1つと考えることができ、安全対策により事故発生確率を大幅に減らすことが可能です。

転用:厚生労働省職場のあんぜんサイト「平成28年業種別事故型別労働災害発生状況(10月末累計)

不用意に生じる事故が減少する

作業者の不注意による事故はスローガンを掲げてもなくなりません。

毎年、厚生労働省が安全衛生週間を掲げていますが、これだけでは災害はなくなりません。
経営者がスローガンを掲げるだけでなく、現場の意思や取り組みが大事なのです。

不注意が起因する事故が全て無くなれば、現場の事故は数値上では1/3程度となります。

また、自分の会社で過去に発生した事故型と見比べてみると分かり易いのではないでしょうか。

毎年のように「はさまれ・巻き込まれ」の事故型を繰り返している会社では労働者(職長及び作業者)の取り組みで労働災害が無くなる可能性が高いのです。
災害事故が1/3となれば災害ゼロ企業数は飛躍的に上昇します。

現場に沿った安全衛生教育を実施する

安全衛生教育を会議だけで済ませてしまうと机上の空論となってしまいます。

スローガンなどを掲げているが、実際には形骸化している場合が多くあります。

一番の理想は現場で安全衛生教育に遂行し現場の危険を取り除く。
現場に沿った安全衛生教育は、必ず現場に活きた効果が生まれます。

「災害は会議室で発生しているのではありません、現場で起きているのです!」

会議室で行う研修は全て例題となります。
隠れた危険を見つけるのには会議室ではなく、現場でなければ見つけることはできません。

労働者が自慢できる職場となる

労働者は会社が災害0を目指すことは当然であると考えていると思います。

安全に仕事ができる環境を作ることは会社の大事な役目です。

労働者は職場環境を他社と比較する傾向にあるため、自分の職場が優位と感じた場合には他の人に自慢します。
逆に危険が多いなど作業環境に問題があると感じた場合には在職中でも様々な人へ不満を伝えます。

そのため、現場の生産性危険リスクだけの数字上の問題だけではなく企業風土にも影響を与えます。

まずは現場に危険はないか取り組んでください

危険作業現場を無くす。

危険な作業安全な作業へ。

危険な現場は近づくことができない取り組みへ。

危険な場所を排除できなければ、防止装置などによる安全装置を設けるなどによる作業者への安全配慮を行うことが必要です。

各作業に必要な資格を取得しなければなりません。

安全衛生教育(職長教育)などの実施

作業者が通常の業務のために機械を使用する方法を熟知している。

しかし、その知識だけでは危険を回避したり、有害を阻止するなどの安全衛生対策へ取り組むことはできません。

作業者が通常の業務手法を学ぶだけでなく、危険を回避する手法などの「安全衛生教育」を学ぶことで安全な現場を作ります。

また、作業者へ指示する現場リーダー職長)が、指導及び教育の方法作業中における監督及び指示の方法など作業者への指示が不明確であれば、現場の作業者が安全対策に取り組むことはできず、その現場から危険が減ることはありません。

現場リーダー職長)が必要な知識を習得し、適切な指示を行うためには、「職長教育」を受講する必要があります。

現場リーダーの職長教育を踏まえ、現場で安全衛生教育を実施する、この過程を実施することで、会社の安全配慮への取り組み度合が図れます。

資格を取得することで安全管理を図る

労働安全衛生法で「現場に作業主任者を選任しなかればならない」や「資格を有する者でなければ就くことができない」などと
規定していることには理由があります。

経験だけでなく、基準となる知識などを習得していなければ、作業の遂行だけでなく安全面からも危険リスクが高まります。

労働者は業務命令となれば無資格でも作業します。

労働者が無資格で作業すれば、会社が責任追及され、業務災害の可能性が高まり、企業の安全配慮義務違反と問われることとなります。

作業主任者

労働安全衛生法第14 条(作業主任者)
事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、構成労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

就業制限

労働安全衛生法第61条(就業制限)
事業者は、クレーンの運転その他の業務で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の当該業務に係る免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う当該業務に係る技能講習を修了した者その他厚生労働省令で定める資格を有する者でなければ、当該業務に就かせてはならない。

安全衛生管理体制の確立

職場の規模に応じて異なりますが、管理者や推進者などの体制を整える必要があります。
規模の分岐点は50人、業種は危険性の高さ度合で異なります。

総括安全衛生管理者

労働安全衛生法第10条(総括安全衛生管理者)
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

安全管理者

労働安全衛生法第11条(安全管理者)
事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

衛生管理者

労働安全衛生法第12条(衛生管理者)
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

安全衛生推進者等

労働安全衛生法第12条の2(安全衛生推進者等)
事業者は、第11条第1項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第10条第1項各号の業務(第25条の2第2項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第11条第1項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。

産業医等

労働安全衛生法第13条(産業医等)
事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

 

今すぐ現場リーダーに職長教育を受講させることをお勧めします

現場のリーダーが必要なスキルや安全への取り組みに対する最低条件は職長教育のカリキュラムがあります。

勿論、この職長教育は労働安全衛生法で定められていますが、法が定めている最低限の条件です。

常に現場を意識していれなければ危険は常に変化します。
リーダーが現場を離れることができず、時間を割くことができない状況かもしれません。

しかし、災害が発生すれば会社の安全配慮義務が問われるだけでなく、信用問題や業務停止も考えられるのです。

平日連続2日間のカリキュラムの時間を作ることが困難なのであれば何時でも御相談に応じます。

労働安全衛生法第60条(職長教育)
事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、次の事項について、厚生労働省令で定めるところにより、安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
一  作業方法の決定及び労働者の配置に関すること。
二  労働者に対する指導又は監督の方法に関すること。
三  前二号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な事項で、厚生労働省令で定めるもの

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