職長教育

職長教育の必要性について考えてみましょう

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職長とはどのような人なのでしょうか?

そもそも職長って誰よ!そんな人は我社にはいないんだけど・・・
作業現場で職長という肩書きで呼ばれている人はいるのでしょうか。

職場による労働者の安全衛生を法律化した「安全労働安全衛生法第60条」では、はっきりと職長という語句があり、事業者職長に対して教育を行わなければならないと記載されていますが、職長という言葉は聞きなれないのではないでしょうか。

職長を世界大百科事典第2版で検索してみると、

工場などの作業現場において,労働者の指揮,監督,指導にあたる,職制上の最末端職位に位置するものの総称。現場監督者とも呼ばれる。具体的な呼称は企業によりさまざまであり,作業長,組長,伍長,班長などが例としてあげられる。アメリカやイギリスでは,フォアマン(foreman)あるいはスーパーバイザー(supervisor),またドイツではマイスター(Meister),フランスではコントルメートル(contremaître)と呼ばれるものにあたる。

このように、職長とは総称に過ぎず、現場には呼び名は違えど職長に値する人は必ずいます。

リーダー,チーフ,班長,作業長,(現場)監督などなど。
時には、工場長や工長,社長が職長に値することもあるのです。

呼び名はあまり問わず、作業現場において現場を直接指揮・命令する人の総称であると考えた方が分かり易いと思います。

職長は、頻繁に現場を訪れることができない管理職に変わって、現場の直接指揮や監督する立場にあります。

現場での職長の役割とは何でしょうか?

職長が現場を直接指揮や監督する人であることは解ったけれど、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。

職長の責務は、現場の安全管理が最優先であり、その安全環境の中で、作業が遅滞なく遂行できるように図らなければなりません。

そのために、職長は現場の安全衛生作業手順など、現場のあらゆる事項に精通していることが必要です。

生産性の向上不良品を無くすことなども重要な職務の一つですが、根本にあるのは労働者の安全や健康です。

安全な作業が遂行できるように、作業手順の見直しを検討、作業者と設備のレイアウト変更、危険な行為や場所を取り除くなど多岐に及びます。

職長は、現場を俯瞰するのと同時に細部にまで注視しなければなりません。

職長がいない現場はどうなるのか?

現場リーダーや主任など作業者に直接指示をする人が不在であると想像してください。

1日だけ不在だとしたら・・・
「うるさいリーダーがいないから気が休まるな~!」などと浮かれ気分ではないでしょうか。

しかし、作業者は自身の作業を遂行することが職務であるため、直接関係のない作業に関心がないのが普通です。
少し周りを気にする人でも、前後の工程の流れを確認する程度ではないでしょうか。

このように、周囲を意識することなく、個々の動きのみの行う作業者だけで、現場が統率されることはできるのでしょうか。

「そんなことないよ!我が社では横の繋がりがしっかりとしてるから職長はいらないんだ。」
などと主張している経営者もいるのではないでしょうか。

では、トラブルや災害は発生した場合の責任はどうするのでしょうか。

労働安全衛生法第1条では、

労働安全衛生法第一条
この法律は、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

と明文化かされているのです。

確かに、チームワークの良さ等は業務を遂行するうえで最も必要な事項です。

しかし、役割分担を明確にしなければ、現場の安全確保は後回しとなり、災害が発生し易くなります。
そのためにも責任体制の明確化が必要となるのです。

職長に必要なスキルとは?

 現場を統率することが職長の役割であるため、単に職歴が長いこと製造技術に長けていることを理由として、職長の職務が遂行できるわけではありません。

 職人や熟練者≠職長

であることを忘れては行けません。

職長は、作業について精通していることで足り、能力がNo1である必要はありません。

では、職長に求められる能力とは何でしょうか?

理論の元に問題解決を実施できること

現状に満足することなく、常に問題意識を持ち、改善を追求し続けることが必要です。
現場の危機管理や業務遂行のスケジュール、人員配置など様々な事態に備えて問題解決力を必要とします。

好奇心かつ理解力を持つこと

現状で満足しないとは言っても職長の能力には限界があります。
そのような場合に、職長新技術や新製品などの情報を取り入れる好奇心理解力が備わっていなければ、その現場市場に取り残されます。
常にアンテナを張り、その情報を高度な理解力で吸収し、現場に役立てる力が必要です。

上司・部下・取引先からの大きな信頼

 豊かな人間性を持つこと、すなわち人として信頼されているかが問われます。
信頼できないできない人に対する壁は大きく、どんなに優れた指導力理解力を持っていても人として信頼されなければ無意味です。
特に部下を気遣い、リーダーシップを発揮できる職長は、現場での信頼度は高いと言えます。

職長になるには職長教育を受講すること

職長教育は各事業者に義務付けられています。

そのため、必ずしも外部の教育機関で受講しなければならない規定ではないのです。
研修はOJTでもOff-JTでどちらでも構いません。

但し、誰から教えてもらっても良いわけではありません。

労働安全衛生規則第40条により、

当教育の講師には、教育事項について必要な知識および経験を有する者とすることと解釈例規されています。
さらに、厚生労働省通達では、職長教育時の講師には、RSTトレーナーを活用することが推奨されているのです。

社内に同等の人が在籍しているのであれば現場を熟知しているRSTトレーナーが適任ではないでしょうか。

職長の知識があれば防げる事故が84.5%

職長危険作業危険領域などを排除し、現場の安全性を追求するだけで防ぐことができる業務災害は沢山あります。

墜落・転落は落下しないようにするなどではなく、上に物を置かないなど危険物そのものを取り除きます。

衝突は衝突物が存在するから災害が発生するのです。
衝突する相手を無くせば、災害が発生する可能性は0%となります。

厚生労働省のサイト「平成28年業種別事業場規模別労働災害発生状況」で掲げられている災害項目では、職長のスキル現場で活用されることで、回避できる可能性のある災害は、21項目中8項目と推定できます。

8項目の事故が回避できた場合、事故は84.5%減ることになります。

 

参考文献(厚生労働省職場のあんぜんサイト「平成28年業種別事業場規模別労働災害発生状況」②業種事故型」

職長のいる現場の安心感

現場で製品の加工や組立方法など実務については、上司や先輩などから日々指導が行われるのではないでしょうか。
しかし、現場で作業する人が望むのは、成し遂げた完成量ではなく、現場の安全なのです。

危険を顧みずに作業を遂行する作業者なんて存在しません。

作業現場に職長の存在があれば、作業者の環境を常に維持することが可能となります。
現場の環境が良いことで仕事の能率は見違えるほどに躍進します。
しかし、単に現場の環境と言っても多岐に及びます。
作業現場には危険作業や危険領域のように見てわかる危険だけでなく、過重労働やメンタルヘルスなどの作業者を日々観察しなければ判断できない危険も存在します。
職長が現場にいることで、様々な危険から作業者を守り、業務を達成することができるのです。

職長の存在が不良品をなくす

職長の責務は、現場全般に及ぶため職長の手腕で現場が大きく左右されます。
危険作業危険領域を無くすだけではなく、作業手順書により作業時間の短縮や不良品などのミスをなくすことも可能です。
さらには、作業者の健康管理などの体調管理による意識改革によるモチベーションもあがります。

現場の作業者全員に職長能力があったらどうなるか?

作業現場全員が、職長と同等のスキルを持っていると想定したらどうなるでしょうか。
勿論、全員が常に安全配慮を遂行できるわけではありませんが、スキルを備えているだけで、現場の安全衛生管理は抜群に改善されます。
1つの業務災害は、現場がコツコツと積み上げた実績を崩しかねません。
快適職場を形成するためにも職長は必要ですし、職長教育は欠かせないのです。

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